奈良公園周辺の鹿は、直接人の手から餌をもらうほど慣れており、奈良公園以外にも街中で横断歩道を歩いたり、住宅街に押し寄せたりなど、至るところで鹿の姿を見ています。奈良公園周辺の市民にとっては見慣れた光景です。約1200頭の鹿(2023年は、オス286頭・メス770頭・子鹿177頭・計1233頭)と人が共に生活をする愛くるしい奈良の鹿に、世界中の方々が魅せられています。
この記事では、奈良公園周辺の鹿に襲われる主な理由3つと、対処法5つと鹿についての豆知識を解説していきます。
鹿に襲われてしまう理由と対処法
なぜ奈良に鹿がたくさんいるの?
その昔、タケミカヅチノミコト様が鹿島神宮より御蓋山へ白い鹿に乗って来られたことから、鹿は『神の使い』として大切に扱われるようになりました。
神の使いである鹿の命は尊いものとされており、家の前で鹿が死んでいると、その家の家主は罰金三文を払うことになるため、住民たちは毎日朝早く起き、家の前で鹿が死んでいないかを確認し、自分の家の前で死んでいたら、違う家の前に動かし、一番遅く起きた人が三文を払うことになったそうです。
『早起きは三文の徳』言われている説の1つです。
保護の歴史
- 1672年から奈良奉行、溝口信勝(みぞぐちのぶかつ)が鹿の角きりを始めて以後、奈良奉行の監督下で毎年行われるようになりました。
- 1873年鹿園(木柵)が建設され、700頭以上の鹿を収容するも、11月、餌不足などで多くの鹿が死に38頭まで減少しました。その後鹿を解放し、絶滅は免れました。
- 1880年鹿を殺したり傷つけてはいけない地域が設定され、奈良公園が開設されました。
- 1946年戦中・戦後の混乱によって、鹿の密猟がすすみ、約80頭まで減少してしまいました。
- 1957年名称『奈良のシカ』として国の天然記念物に指定されました。
その後、天然記念物「奈良のシカ」保護管理指導基準が制定されたり、 交通事故防止用「鹿の飛び出し注意」の道路反射境を設置するなどし、奈良のシカの愛護週間(5月)、愛護月間(11月)が創設されるようになりました。
鹿のフンは誰が掃除するの?
鹿は1日に約500~700グラムのフンをしますが、フンが粒々なのは、大腸の構造によるもので食べ物である草を内臓が活発に絞り取り栄養に変えるためです。
奈良公園には、フンを自然に返す分解者として“フン虫(コガネムシ類)”が約40種類の他に、ミミズ、微生物などがいます。
鹿をはじめ奈良公園に生息する動物たちのフンをエサとして生活をし、奈良公園にはこの地方に住む鮮やかな瑠璃色(るりいろ)をしたルリセンチコガネがいます。
鹿に襲われる主な理由とは
奈良公園周辺の鹿は人にとても慣れていますが、『神の使い』として大切に扱われており、『国の特別天然記念物』として保護されている『野生動物』だということを忘れないでおいてください。
餌を見せてなかなか食べさせない
鹿せんべいを見せて、鹿がおじぎをする姿を動画や写真をたくさん撮ろうとしてなかなか食べさせず、鹿に攻撃されている方をよく見かけますが、目の前にある食べ物を、なかなか食べさせてもらえず怒るのは人も同じです。
鹿のおじぎは『餌をください』ではなく、『早くちょうだい』という催促の意味があるので、おじぎをしたらすぐに少しずつでもあげるようにして、鹿せんべいがなくなったとしても、人間の食べ物は、病気や命を落とす原因になるので与えるのはやめましょう。
人に攻撃をすれば餌がもらえると覚えてしまうと、ドンドン攻撃をしてくるようになってしまいます。奈良の鹿が人を襲うのは、私たちが鹿の嫌がることをして人が襲うようにさせてしまった結果だと気づいていただけたら嬉しいです。
鹿せんべいを鹿にあげる際は、少しずつ手のひらに乗せて口の前に差し出すようにすれば、嚙まれにくくなります。また、鹿せんべいを巻いている紙も餌にできますし、秋から冬には、どんぐりをあげれば、器用に皮だけ出す姿も見られます。
鹿せんべい以外に何を食べる?
鹿せんべいはおやつであり、主食は枝葉、草、どんぐりなどです。
芝、ヨモギ、タンポポ、クローバーなど喜んで食べます。クローバーに似たカタバミは食べさせてはいけません。
台風のあとに木の枝が折れ地面に落ちた葉っぱを鹿が食べます。
樫、楓、金木犀、桜、藤、笹、竹、山桃、楠などです。鹿は人の指くらいの太さの枝までは食べてくれます。
奈良公園の木で、下から約2メートル位まで食べられている木があります。その木と同じ落ち葉を与えてみると食べてくれるかもしれません。
キョウチクトウ、ツツジ、紫陽花は毒があるので、食べさせてはいません。
鹿せんべいの売り上げの一部は、鹿の保護活動に使われています。鹿せんべいを買い、鹿の保護活動のお手伝いをしてくださっていることに、とても感謝しております。
鹿せんべいを買うだけでなく、自動販売機にも鹿の保護団体に寄付するボタンがあったりもするので、ぜひ探してみてください。
小鹿に触れたり、子どもだけで鹿に近づく
鹿からのお願い
○5月中旬~7月頃が鹿の赤ちゃんが誕生するシーズンです。
○奈良公園内で鹿の赤ちゃんを見つけたら、そっと見守ってください。
子鹿は生後2~3週間は草むら付近で隠れて過ごす習性があります。
○鹿の赤ちゃんには触らないでください。
人の匂いがついてお母さん鹿がお乳を与えなくなることがあります。
○お母さん鹿に注意してください。
お母さん鹿は母性本能が強く、人が赤ちゃん鹿に近づいたりするだけで攻撃してくることがあります。
○鹿が誤ってゴミを食べてしまいますので、ゴミは必ず持ち帰りましょう。
○奈良公園に生息する鹿は野生動物でその他の食べ物を与えるとお腹を壊しますので与えないでください。令和6年度 子鹿第1号誕生! – 一般財団法人奈良の鹿愛護会ブログ|イベント情報と日々のこと
子鹿に人が触り、人のにおいがついてしまうと母鹿が育てなくなって死んでしまうことを外国の方にも伝えたいと思い、小さなホテル奈良倶楽部さん(@HotelNaraclub)と一緒に英語と中国語のお知らせを作りました。
スマホの画面で見せられるサイズにしています。
ご自由にお使いください。 pic.twitter.com/5IY9ORAf3W
— 寿 (@HiS_YM) June 8, 2023
野生動物の鹿から見れば、人の子供は自分よりも小さい=弱いとなり、本能的に攻撃される事があるので、子供だけで鹿に近づくのは大変危険です。9月~11月に発情期を迎えた雄鹿には角があるので、写真を撮るなど鹿に近づく場合は、子供だけではなく大人が一緒に手をつないで近くにいってあげてください。大人は鹿よりも大きいので、何もしない状態で攻撃を受けることはあまりありません。
自分の子供に、知らない人が近づいてくれば警戒するのと同じで、小鹿に近づくと親鹿から攻撃を受けることがあります。
5月~7月にかけて鹿が出産をする時期になります。生後2~3週間のお乳を飲んでいる小鹿に人間の臭いがついてしまうと、親鹿から育児放棄されてしまうこともあるので、小鹿には触らず、近くで見守るだけにしましょう。
座っている鹿なら比較的穏やかで写真を取りやすく感じますが、鹿には感染症を引き起こすマダニがいる場合もあるので触るのは控えましょう。
ナイロン袋、パンフレットをそのまま持ち歩く
観光客の少ない時に、売り物の鹿せんべいを襲わないよう、割れて売れない鹿せんべいを、販売員さんがナイロン袋から出して鹿に与えることもあるそうで、鹿はナイロン袋や、パンフレットのガサガサする音がすると餌がもらえる勘違いをして寄ってきます。
手に持ち歩いている方のナイロン袋やパンフレット、ベビーカーに置いているナイロン袋を鹿が持ち去るのを何回も目にしています。私も鹿にナイロン袋を持っていかれそうになったことがあるので、鹿がいると思われる場所に行く場合はエコバッグを使い、ナイロン袋やパンフレットは隠すようにするか、ガサガサ音を出さないようにしましょう。
鹿がゴミやナイロン袋を食べてしまい死亡することが問題となっています。ナイロン袋やゴミが風で飛んで行ってしまった場合は周りの方にもお願いし、なるべく回収して持ち帰るようにしていただけると助かります。
『食べ歩き』について
アイス、コーヒー等テイクアウトで購入した商品を、お店の前で飲食し、完食後に購入したお店にカップや包み紙などのゴミを捨ててから次の目的地に行く事
を言い、あちこち歩きながら食べる事とは違います。
奈良公園付近は鹿の保護の為ゴミ箱が設置されていません。
- 道端や溝、店舗の雨の日の傘袋を捨てるボックスにゴミのポイ捨て
- 歩きながら食べて人の服等を汚す
- 他店に持ち込み店内の商品を汚す
- 他の飲食店で食べたついでにカップや不要になったパンフレット等のゴミを置いて出ていく
- トイレの汚物入れに捨てる
等、沢山の店舗の迷惑になっています。
テイクアウトを購入した店舗に戻り、ゴミを捨てられない場合は、家まで持ち帰るようお願いいたします。
美鹿パトロール隊は国の天然記念物奈良のシカの生息環境を良くするため奈良公園の美化活動を行っています。鹿たちをプラゴミ類等の誤飲から守るためにゴミの持ち帰りや落ちているゴミを見つけたら拾っていただけるようご協力お願いします。#なら燈花会をもっと美しく #なら燈花会 pic.twitter.com/KOIITf5bcy
— 一般財団法人奈良の鹿愛護会 公式アカウント (@nara_aigokai) August 8, 2023
鹿から襲われないように自分の身を守るため、そして神の使いである鹿の命を守るためにも、ご協力をよろしくお願いいたします。
鹿に襲われない効果的な対処法とは
*画像は鹿愛護会さんのHPからお借りしました。
時間をずらして観光する
満腹になると座っている鹿が多くなるので、近づいてきません。
奈良公園周辺の観光地では、たくさんの方に鹿せんべいをもらい満腹になる夕方頃がオススメですが、時間的に難しい方は、なるべくお昼以降に行かれるといいです。
鹿の前で鞄やエコバッグからものを出さない
鹿の写真を撮るために鞄からスマホを出す、お賽銭を出そうと鞄からお財布を出すなどでも、ガサガサと音が鳴り、鹿せんべいをもらえると勘違いをして鹿は寄ってきます。
実験的に、鞄からスマホやお財布を出すしぐさをすると鹿が寄ってきました。鹿の多いところでは移動している鹿に囲まれてしまうこともありますので、必要なものはすぐに取り出せるようにしておくか、鞄の中のものを探すなどの場合は、なるべく鹿のいない所や木の後ろに隠れるなどして鹿に見えない所で探しましょう。
怖くても背中を向けて走って逃げない
怖がって背中を向けて走って逃げると、本能的に勝てる相手と判断され、鹿に追いかけられることもあります。野生動物は特に敏感に反応するため、怖い気持ちは鹿に伝わります。怖くても走って逃げないで堂々としててください。
実際に、男性が襲われかけた自分の子どもから目をそらすために走って逃げ、鹿に追いかけられてお尻を嚙まれていたり、私の子どもが、1匹でいた小鹿に近づこうとしたとき、猛スピードで駆け寄って来た親鹿を見て怖くなり、走って離れてしまい追いかけてきた親鹿に蹴られたりしています。
鹿の近くで立ち止まらない
鹿を怖がる子どもに、鹿が寄ってこないようにするにはどうしたらいいのかと鹿を観察していると、歩いている人には近づかず、立ち止まっている人に鹿は近づいていました。
試しに鹿が寄ってきたら、立ち止まらず少し速足で歩きながら離れてみると、鹿は他の人の所に移動していきました。
鹿せんべいを人がいる売場で買うと囲まれてしまう場合もあるので、せんべいを受け取ったら立ち止まらず早足で売場から遠くに離れるか、無人の鹿せんべい売場で買うと鹿もあまりいないです。
両手をパーにして鹿に見せバイバイする
鹿が寄ってくると怖いかもしれませんが、何も持っていないとアピールするように「ないよ」と言いながら両手をパーにして鹿に見せバイバイします。子どもも、鹿に両手でバイバイしながら歩くと寄ってこなかったです。
もし、鹿に囲まれてしまったら、ナイロン袋などカサカサするものがある時は、音を鳴らさないようにします。カサカサ音が鳴ったり、鞄などに手を入れたりすると餌がもらえるかもと勘違いをしてさらに寄ってくる危険があります。
鹿に囲まれている間は、怖いのを我慢しずっと鹿達と目を合わせ、両手をパーにしてに見せていると、何もないと分かったのか、スッと離れ後ろにいた方々の所へ移動していきました。
私は鹿の近くを通る時は、鹿と目を合わせ、パーにした手を見せてバイバイしなが、速足で止まらずに歩いて通りすぎるようにするとついてきません。
奈良公園周辺の観光ガイド・お知らせ
雨の日の奈良公園は、靴が泥まみれ・鹿のフンまみれになる場所もあるので、市内循環バス(250円)の中から奈良公園を一回りする観光の仕方もオススメです。
奈良国立博物館
奈良公園周辺トイレマップ
JR奈良駅隣や近鉄奈良駅1階にある観光案内所や、三条通りの観光センターなどにトイレの書かれている奈良公園周辺の地図も置いてあり、奈良県のホームページにはトイレだけでなく、ウォークマップや所要時間なども載っていますので参考にしてください。奈良公園周辺には飲食店が入っている商業施設などにもトイレはありますので、トイレの心配はしなくても大丈夫です。
車(駐車場情報あり)
奈良交通バス
バスの現在地情報・バス料金・時刻等が検索できます。
- 前乗りバスは、料金が全区間同じ250円で先払いになります。
- 後ろ乗りバスは、距離によって料金が変わるので、後払いになります。
バスの扉横に入口・出口の表示を(前乗りか後ろ乗り)確認して乗車してください。
その他の区間の料金は下のサイトからご確認ください。
◯奈良公園周辺
◯ならまち周辺
ぐるっとバス
1人100円で乗車できます。
まとめ
襲われる主な理由とは
- 餌を見せてなかなか食べさせない
➡おじぎは餌の催促サインなのですぐに餌を与える - 芝・どんぐり・ヨモギ・タンポポなども好物
- 小鹿にふれたり、子どもだけで鹿に近づく
➡小鹿には絶対近づかない。鹿に近づくときは大人と一緒に - ナイロン袋、パンフレットをそのまま持ち歩く
➡ナイロン袋を使わず、エコバッグを持ち歩くようにする。
襲われないための効果的な対処法
- 観光時間をずらす
➡鹿の満腹になりそうな時間に行く。 - 鹿の前で鞄のものを取り出さない
➡鹿のいない所や木の後ろに隠れるなど鹿に見えない所で取り出す。 - 怖くても背中を向けて走って逃げない
➡走って逃げると鹿は本能的に勝てる相手だと思うので堂々としている - 鹿の近くでは立ち止まらない
➡立ち止まっていると寄ってくるので、鹿が近づいてきたら少し速足で歩いて鹿から離れる。 - 両手をパーにして見せバイバイする
➡両手をパーにして鹿に見せ何もないとアピールしてバイバイしながら歩いて立ち去る。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
皆様が鹿との楽しい時間を過ごせますように。
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